2020年9月12日、長野県諏訪市で「SUWAリレバンサミット2020」という金融関係者のイベントがあったことを前回書きました。
このイベントは諏訪信用金庫の主催です。共催が「地域金融変革運動体」です。
イベントで「地域金融変革運動体」メンバーとして挨拶されたのが、大阪の銀行員の吉澤徹氏。
吉澤氏は「地域金融変革運動体」について「地域金融に熱い想いを持った人たちの集まり・ネットワーク。
それぞれが属する組織を超えた、打てば響く個人のつながり。部活動。地域金融の共感集団」
と説明された上で、以下のようなエピソードを紹介されました。
心打たれる内容でしたので、そのままご紹介させていただきます。(以下引用です)
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昨年(2019年)の7月、東京で地域変革運動体の大納涼会が開催されました。
その二次会でバラバラに座り、お隣にいる方と
「いや初めまして」と名刺交換をさせていただいたんです。
そのときにいただいたお名刺に
「諏訪信金 長地支店 支店長」と書いてあり、びっくりしたんです。
「えー、諏訪信金さんですか。私、実は長野県の諏訪市の出身の人間でありまして
高校3年までは、諏訪の地で生まれて育ってきた人間です。
大学入学から大阪に移り住みまして、大阪の銀行に就職したんです」
で、その後、その諏訪信金の支店長とお話させていただきまして
「どこにお住まいだったんですか」
「いやー、こうなんですよ」みたいなお話させていただきましたら、
支店長の顔がはっと変わったんですね。
「お母さん、知ってますよ」と。驚きました。
「ええーっ」と。
「いつも自転車で走って、お母さん、がんばってましたよね」みたいなお話をされるんです。
なんと、その支店長が昔、私の母親の担当として
長野県の実家に訪問してくれていたと。そんなことを聞きました。
これはもうびっくりしました。
「へー、そんなことってあったんや」と。
私、大阪に移り住んで仕事をしていたんですが、
なかなか長野県まで帰ってくることはできませんでした。
まあ2年に1回とか、3年に1回とか。そんなペースでしか帰ってこれませんでしたけども
帰るたびにですね。母親が私に言うんですよ。
「徹な。信金さんが母さんの所に来てくれてな。とってもいい人。
母さん、とっても嬉しいんだよ」と。
「なんかね。信金さんが来てくれると、大阪でおまえもね。
こうやって、たくさんのお客さんに喜んでいただいている。
そんな風にがんばっているのかなと思えると
もう信金さんが来てくれたら、おまえが帰ってきてくれたみたいで、
母さん嬉しくて嬉しくて、とっても楽しみにしているんだよ」
って本当に帰るたびに聞いていたんですよね。
私は返す言葉もなく
「ああ、そう、よかったね」と言っておりましたが、
まあ、その信金さんに東京で隣に、会うことができたとは、
本当に驚いて驚いて、こんなご縁ってあるのかなと
こんな素晴らしい、ありがたいご縁をちょうだいした運動会の会に感謝したいと感じた、
そういうことがありました。
(中略)
私はずっと大阪で働いておりました。
母親から聞いておりました
「おまえもこうやって大阪でたくさんのお客さんに喜んでいただいているのかな」
っていうその言葉がずっと頭から離れずに、
一人でも多くのお客様に元気になっていただくことはできないかな。
何かお客さんのお役に立てないのかな。
という思いで、活動をしてきたところなんですね。
これは私だけじゃありません。
おそらく、ここにお集まりの方もそのジレンマというか。感じておられると思います。
皆さんね、今、これしなあかんねんと。
自分のお客さんにこういうことをしてあげなあかんねんと。
でもな、求められているの、これやろと。
これしなかったら、店の表彰なり評価なり、俺の生活なり、ちょっとなかなかうまいこといかないよねと。
やらなしゃあないよねということで、やりたくてもできない状態にあるんじゃないでしょうかね。
これってものすごいね。大事な話だと思うんですよ。
今、向かわんとあかんべきことにきちっと組織として対応する。
これが今、一番求められていることじゃないんでしょうか。
本当にそういう切実な想いで一人ひとりの職員が働いているということを
(銀行の)経営に携わる方にはしっかりと理解していただきたい。
そんな風に思います。
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銀行員というと、一般に合理的でクールなイメージがあると思います。
実際には、こんな熱い心のバンカーもおられるということですね。
このエピソードは、「捨てられる銀行 4 消えた銀行員 地域金融変革運動体」(橋本卓典氏)でも
詳しく紹介されています。
ぜひ一読されることをお勧めいたします。