先日、ある企業で「会社のお金の流れを知ろう!- 節約以外に貯金を増やす働き方とは?」というテーマで、社員研修を実施しました。
そのときに参加されていた社員さんから、こんな質問をいただきました。
「見積作成についての質問です。
利益率を50%にしたいときに、原価の1.5倍を見積金額にするのではダメだと言われました。
原価の金額を0.5で割るのだそうです。
なぜそうなるのか、いくら考えてもよくわかりません。
なぜなんでしょうか?」
というご質問でした。
このご質問をお聞きして、思い出したことがあります。
数年前に、ある工務店さんの相談対応をしたときのことです。
社長の悩みは、思っていた利益確保ができないとのことでした。
いろいろお話を伺いましたが、施工時に工期が予定より長くなっているわけでもないそうです。
また、見積よりも材料を使い過ぎているということもないそうです。
「見積金額が安すぎるということはないでしょうか?」
とお尋ねすると
「必ず3割以上の利益を取るようにしている。
でも、気がついたら、3割取れていない。
なぜなのか、わからない」
とのお答えでした。
そこで、具体的にどんな手順で見積されているのかをお尋ねしたところ、
「原価が100なら、30の利益をのせて見積を書いている」
それを伺って、ピンと来ました。
「それだったら、利益率30%にはならないですよね…」
社長は、納得されていないご様子。そこで、
利益30÷(原価100+利益30)=23%
と一緒に電卓を叩いてみて、念のため、決算書を確認したところ、売上総利益率がちょうど23%でした。
見積金額の手順に誤りがあったために、利益が残っていないことがわかりました。
確かに、直感的には、利益を30のせたらいいような気がしますよね。
実際には、30%の利益を確保するには、原価を原価率で割らないと見積金額の算出ができません。
原価100÷(100%-利益率30%)=見積金額143
利益43÷見積金額143=30%
上記の計算が正解です。
研修の社員さんの場合は、利益率を50%にされたいというお話でした。
こちらも直感的には、利益50をのせるので、原価の1.5倍にすればいいようにも思えますが、その計算では、利益率が33%になってしまいます。
原価100×1.5倍=見積金額150
利益50÷見積金額150×100=33%
原価を原価率50%(=0.5)で割ることで、利益率50%となる見積金額が算出できます。
原価100÷原価率50%=見積金額200
利益100÷見積金額200×100=50%
こういう計算を間違えないようにするには、ちょっとしたコツがあります。
それは、図を描いてみることです。
直感で正しそうであっても、図を描いてみて、本当にそうか確認して、見積で損をしないように気をつけたいですね。
中小企業診断士の試験のときに、損益分岐点売上を求める計算式を
固定費÷(1-変動費率)
と説明されて、さっぱり腑に落ちなかったけれど、これも同じ話です。
図にすると、なぜなのか一目瞭然です。
図で理解しておくと、ややこしい計算式を覚える必要もなくなりますね。