ある後継者の方から
「借入の保証人になるのが気が重い…」とお聞きしたことがあります。
事業承継において、借入の個人保証は障害の一つと言えるでしょう。
国としても個人保証の問題を重要視しています。
具体的には、この4月から借入の際に個人保証を求める手続きが厳格化されます。
金融機関が経営者等に個人保証を求める場合には
・どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか。
・どのような改善を図れば保証契約の変更、解除の可能性が高まるか。
について具体的に説明し、記録する事が 必要になります。
こういう施策においては、 その実効性をどう担保するかが重要です。
今回は、金融庁に「経営者保証専用相談窓口」を設置し、
「金融機関から経営者保証に関する適切な説明がない」などの相談を受けつけ、
状況に応じて、金融機関に対してヒアリングなどを実施するようです。
金融庁としても真剣に取り組まれるようですので実効性を期待したいところです。
また、2024年4月には、以下の制度を開始するようです。
①一定の要件と保証料の上乗せ負担により、
経営者保証の解除を選択できる信用保証制度の創設
②売掛債権・棚卸資産を担保とする融資(ABL) に対する
信用保証制度において、経営者保証の徴求を廃止
③プロパー融資における経営者保証の解除等を条件に
プロパー融資の一部に限り、借換を例外的に認める
プロパー借換保証の時限的創設
なお、上記①の一定の要件とは
・法人から代表者への貸付等がないこと、
・決算書類等を金融機関に定期的に提出していること
など経営者の努力次第で達成可能な要件とするようです。
今回ご紹介した上記3点の制度は、2024年4月からの制度です。
現時点で利用できる制度としては、事業承継特別保証という制度があります。
これは事業承継に際して、経営者保証を外すことができる制度です。
利用できる会社は以下のいずれかです。
1) 申込受付日から3年以内に事業承継を予定する事業承継計画を
有する法人
2) 事業承継実施から3年未満の法人
(2020年1月から2025年3月までに事業承継)
制度利用の要件として以下4点を満たす必要があります。
① 資産超過であること
② EBITDA有利子負債倍率 15倍以内
③ 法人・個人の分離がなされていること
④ 保証協会への申込日において返済緩和している借入金がないこと
この事業承継特別保証制度の利点の一つは、既存のプロパー借入金
(個人保証あり)の借換えも可能という点です。
(ただし保証限度額2億8千万円以内)
要件を満たす場合には利用を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、EBITDA有利子負債倍率の計算式は
(借入金・社債-現預金)÷(営業利益+減価償却費)
です。
つまり、EBITDA有利子負債倍率15倍とは
債務償還年数15年ということです。
こうした要件を見ていると、制度を利用しないとしても
金融機関が企業に求めている事がわかります。
・資産超過であること
・債務償還年数は最大でも15年以内
・法人・個人の分離(法人から代表者への貸付等がない等)
・決算書類等を金融機関への定期的な提出
などなどです。
また金融庁が金融機関に求めている事の一つに
「企業の理解と納得のための具体的な説明」があることもわかります。
金融機関からの支援を得ようとする場合には、自社ができる努力をした上で、
金融機関と十分な対話を図ってみてはいかがでしょうか。