なぜ残業するのか

あなたの会社では、残業は多いですか。残業はしかたのないものですか。して当然のものですか。そもそも、なぜ残業するのでしょうか。

第一義には、定時に仕事が終わらないためと考えられますが、それ以外にも、
定時で帰ると、真面目に仕事をしていないとか、暇だと思われる。
周りが席を立っていないのに、先に帰るのは気が引ける。

など心理的な要因もあるのではないでしょうか。

内閣府が2013年9月に実施した「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」の調査結果に、興味深い数字があります。一日の労働時間と、上司が「残業している人」をどう評価するかという認識には相関関係があるというものです。

一日に12時間以上働く人は、上司は「残業している人」を
がんばっている人
責任感が強い人
と評価すると考えています。

一方で、一日の労働時間が10時間未満の人は、上司は「残業している人」を
がんばっているけど、仕事が遅い人
と評価すると考えているようです。

【上司が「残業している人」をどう評価するかというイメージ】

上司からの評価イメージ

時間はコストです。同じ成果であれば、短時間の方が価値が高いはずですが、「長時間=がんばっている」という上司の認識や職場風土がある限り、短時間に成果を出すことを評価する組織にはなりえず、組織全体の価値向上の取り組みが進まないのではないでしょうか。

【価値の公式】 価値=成果÷コスト

同じ調査で、「残業削減に効果的だと思う取り組みは何か」との設問に対するトップ3の回答は
・計画的な残業禁止日の設定
・上司からの声かけ
・短時間で質の高い仕事をすることを評価する

ですが、このうち「短時間で質の高い仕事をすることを評価する」については、実際の職場での取り組みが4.2%という低い数字に留まっています。

【残業削減に効果的だと思う取り組みは何か。実際に行われていると感じるか】

残業削減に効果的だと思う取り組み

「短時間で質の高い仕事をすることを評価する」ためには、成果の質を判断できることが上司に求められます。

 

定量的に実績把握ができるような職務内容の場合は評価もしやすいですが、部下によって職務内容が大きく異なり、一律な評価が難しいような場合は、上司に識別眼や評価力も必要となります。時間の長短で評価するのは上司にとってはやりやすいという事情もあるのだろうと思います。

ですが、「短時間で質の高い仕事をすることを評価する」組織への転換は、ワークライフバランスの観点からだけ必要なのではなく、企業の競争力の向上という観点からも重要なことと考えます。

周囲に気を使って長時間労働をせざるを得ない企業は、顧客や市場ではなく、社内により関心を集中させている内向きの企業ではないかと感じます。みなさんはどう思われますでしょうか。

 

出典:「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」結果速報
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/research/wlb_h2511/follow-up.pdf